Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編
女性だから、という理由でマリアも強引に連れてきた。地下へ向かう時に眉をひそめていた彼女だけど、地下牢を見た瞬間にひゅっと息を飲んだ。
『……あれが……女王、陛下……?ウソでしょ……??』
にわかには信じ難いのも無理はない。重罪人でさえ、二十世紀の終わりの現代でこんな扱いを受けはしないだろう。
ぼくはおばあさんから借りた鍵で鉄格子を開けようとしたけど、手が震えるし汗で鍵が滑る。 一刻も早く助けたいのに……!と焦れば焦るほど、ろくなことにならなかった。
けど、予想外のことを叔父さんがしでかした。
『階段の角に身を潜ませ、耳を塞いでろ』
叔父さんの指示に従ってマリアとともに階段まで退避すると、両手で耳を塞ぐ。次の瞬間ーー甲高い衝撃音が、石造りの空間に響き渡った。
ガシャン、ともう一度高い音が聞こえて。そっと顔を出して様子を確認すると、鉄格子の出入りするだろう扉部分が完全に破壊され、床に落ちてた。
『女王陛下!』
空いた部分から体を滑り込ませ、無我夢中で駆け寄った。
『女王陛下!しっかりしてください!!』
呼吸がひどく乱れていて苦しそうだ。額に触れると、信じられないくらい熱かった。
『マリア、小さい桶があったら水を入れてタオルも何枚か持ってきて!ボクは着るものとか布団がないか探してくる!』
『え、ええ!あと……近くで熱さましの薬草を見たわ。煎じれば使えたはず。準備するわね』
『うん、お願い!』
マリアもさすが性根が座っていて、今とにかく最優先すべきことを理解してくれてる。しかも、薬草の知識まであってありがたかった。