Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編
炊事場を使った時におばあさんがぎゃあぎゃあ文句言ったらしいけど、マリアはすべてスルーして来たらしい。さすがだね。
どうにか見つけた毛布を体にかけて、冷やしたタオルを額に当てた時、ようやく女王陛下は口を開いた。
けど……その一言はあまりにも……。
『…………わたくしを……やっと殺しに来てくれたの?』
『!?』
あまりにも衝撃的なひと言に、幼すぎるぼくはなにも返せなかった。そして女王陛下は短く息を吐き、かすれた声で訥々と語った。
『……早く……わたくしを解放して……わたくしが生きる意味などない……早くわたくしを楽にして……お願い……誰でもいいから……わたくしを……殺して……』
両手で顔を覆った女王陛下は、その隙間からはらはらと涙を流した。
『……早く……誰もわたくしを必要としない……お母様もお父様も……こんな外見を気味悪がった……妖精の取り替え子と忌み嫌われて……だれ一人わたくしを見てくれない……せめて役立ちたいと女王になったけど……誰も本当の意味でわたくしを見ない……必要としない……わたくしの、生まれた意味などないわ。生きる理由も意味もない……悲しい……つらい……生まれながらの罪人と言われるのも疲れた……早く、わたくしを解放して』
女王陛下の切々とした訴えに、胸が潰れる思いがした。
どうして……どうして!
外見が少し違うだけで、こんな酷い扱いを彼女が受けねばならない? どうして、実の子にこんな冷酷な仕打ちができる!?
虐待を通り越して犯罪じゃないか!と、徐々に頭に血が上ったけど。
それをさらに加速させるひと言を、叔父さんが言い放った。
『なら、勝手に死ねばいい』