Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編
変化する彼らは
「……まさか、ああまでひどいとは思わなかったわ」
ぼくの実家である公爵邸の一番立派な客間の控えの間で、女王陛下を看たお母様は深刻な顔で小さく呟いた。
北の離宮で女王陛下を救出したぼくたちは、すぐに彼女をオーベン公爵邸へ運んだ。
途中でおばあさんがぎゃあぎゃあ言ってたけど、オーベン公爵の名を出して黙らせた。一応居たらしい警備も、叔父さんが金を握らせれば見過ごした緩さも幸いした。
お父様とお母様にはすぐ使いを出して報せ、お父様がすぐに女王陛下を滞在するための理由を考えて、親しい貴族と王族に根回しをしていた。時には脅し……もとい。友好的なお願いもしたらしいけど。宮内卿や大臣には首をたてに振らせたらしい。
“王宮へ向かう最中に気分が悪くなり緊急的に一時療養する”という名目を得たらしい。女王陛下が病弱というのは公に知れ渡っているし、王太后もそれを理由に女王陛下を北の離宮へ追いやっていたんだ。だから、逆にこれにはあからさまに文句を言えない訳だ。反対したら今までの自分達の言い分がおかしいことを認めなきゃならないからね。
流石だね、お父様。素早いしいい仕事してるよ。
とはいえ、期限は限られてる。
どれだけ引き延ばしたところで、女王陛下を保護できるのは長くてせいぜい半月くらいだろう。それ以上は王宮に戻すか入院という選択肢しかない。
その間、女王陛下を無事に戻すための奇策をぼくは考えてみた。
そして、思い付いたのが……
『ねえ、叔父さん。女王陛下の恋人になってみない?』
というものだった。