Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編


『……なぜ、その必要がある?』

叔父さんは自室で無関心そうに書き物をしていたけど、ぼくはやっぱりとため息をつきそうになる。

北の離宮であれだけ女王陛下を叱責し生かしたクセに、後は知らん顔だ。
とことん鈍いというか……知っててわざとスルーしているのか。

『なぜって……女王陛下は叔父さんに会いたがってるよ。ボクだけじゃなく、色んな人に叔父さんのこと訊いてるもん』
『ただの興味だ。オレ個人に関心があるわけではない』

叔父さんは見事なまでにバッサリと、“女王陛下の気の迷い”と斬った。

『でも……さ。女王陛下を滞在を伸ばすにはいい口実だよ。恋人と一緒なら、多少滞在が延びても不自然じゃない。
あ、もちろん本当に恋人にならなくてもいいよ。ふりだけで十分だって』

こんなの応じないだろうな~と、あくまでも軽い提案のつもりだった。
全く女性に関心が無さそうな叔父さんが応じる義務も理由もない。
そもそも、女王陛下をあの地獄から救いだしてくれただけでも十分なんだよね。と、まあ諦めの心境で言ってみたんだけど。

『……わかった』
『え!?』

まさか、叔父さんがこんなガキの思い付きに応じるなんて、思いもよらなかった。

『女王の偽りの恋人になればいいんだな?』
『う、うん……人前でそれらしくすればいいと思う……けど。叔父さん、本当にやるの?』

信じられない思いで聞き返すと、至極真面目な顔で返された。

『一度受けたミッションは、何があろうと完了させるさ』

そして、その足でさらにとんでもないことを女王陛下にやらかしたんだ。

『結婚してくれ』ーーって。
ムードもへったくれもなく、開口一番に無表情で言うことかああぁ!!





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