Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編
ホラ、見ろ!
ベッドの上の女王陛下も、ポカンとした顔で固まってるじゃないか。
近くで控えていた侍女たちも、さすが訓練されているだけあり動じてはいないけど。ここにいていいか迷っているらしい。ため息をついたぼくが下がるように指示を出せば、ホッとした様子で一礼し退出した。
もともと、おばあさまが使われていた部屋。社交性豊かだったおばあさまは、身分関係なく人を招き交流するのが好きだったから、プライペートルームの自室はかなりゆったり造られていて、おばあさまの亡くなられた後は遺言通りに客間になった。
先代の公爵夫人の部屋だから、それは広く豪奢なものだが、おばあさまのがセンスがいいから品よく纏まった居心地のいい空間になっている。
お父様の手配された侍医と看護師の懸命の治療、10人の侍女による看病、そして滋養のある療養食と暖かな部屋で療養された女王陛下は、1週間前と比べれば見違えるほど回復されてきていた。
枯れ木のようだった手足は少しだけど肉がついて、がさがさだった肌も若干なめらかに。熱も下がって咳もましになってきた。すっかり手入れされた銀髪は艶が出てきたし、空虚だった瞳も少しずつ光が戻ってきた。
看病はお母様が率先してされて、お父様も毎日様子を見に来る。ぼくやマリアやアーベルもお見舞いに行って、毎日の学校の様子などを一方的にべらべら喋っていた。
当初は高熱で意識が朦朧としていた女王陛下も、日が経つにつれて反応を見せるようになった。それでもお言葉はいただけてない。
で、今に至るのだけど。
そんな状況で、叔父さんがいきなりやらかしてくれたんだよね。