Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編
女王陛下は何度も瞬きをしてから、ハッとした顔をして片手で口元を覆う。そして躊躇う様子を見せながら、ゆっくりと口を開いた。
『……なんの、冗談でしょうか?』
『冗談ではない』
叔父さんはぶっきらぼうに返す……というか!いい大人なんだから、陛下相手にそんな口のきき方しないでよ!とぼくの方がハラハラする。
『結婚すれば、一緒に居られる』
『……』
やはり、女王陛下はにわかには信じ難い様子だった。落ち着きなく手元の布団を弄り、視線はそちらへ落ちてしまう。
『……失礼かもしれませんが、やはり信じられません。あなたがわたくしに求婚する理由がどこにあるのでしょうか?』
そりゃ、そうだよな。
今の今まで、二人が会ったのはあの離宮のみだし。しかも1回こっきり。
助けたという縁はあるけれど、とても恋愛沙汰に繋がる要素はない……と思う。まだ8歳のぼくの考えだけどね。
けれど、女王陛下の疑問に叔父さんはとんでもない返しをした。
『あの、母親のもとに戻りたいのか?』
それを聞いた途端、女王陛下の顔が強張った。
けれど、しばらくして彼女は当たり前のように答えた。
『……それは……わたくしのお母様ですもの……も、戻るのは当然ではありませんか』
『息子のために実の娘のアンタを殺そうとするーーそんな親に、まだ子どもであろうとする必要はない』
叔父さんはバッサリと、誰もが言えない現実を突きつけた。