Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編
けれど、その使者が“王太后陛下よりのお見舞いでございます”と、持参した食品の数々。疑わしいそれらを検査したら、当然毒物や薬物が検出された。
しかも、一口食べただけで死に至る致死量が混入されてた。
『女王陛下を弑逆し、さらにこちらを犯人に仕立てようって腹ね』
ため息をついたお母様はすぐに似た食材を取り寄せ、それを女王陛下に振る舞った。
もちろん、このことは陛下には伝えていない。いくら抗うと決めても、彼女は母后を慕っている。まだ療養中のデリケートな時期に、わざわざメンタル的に下がることを伝える必要はないだろう、というお母様の判断だった。
『……女王陛下はこんなにもお辛い立場にいらしたのね』
ただ、マリアには全てしっかりと伝えた。6歳とはいえ、彼女は大人顔負けの聡明さがある。
この1ヶ月で、女王陛下の現実をきちんと理解していたようだ。
『わたくし、もしもオーベン公爵家を継ぐならば、王太后陛下側を抑える役割を演じたいですわ。誠心誠意仕えるふりをしながら、なんとかコントロールしてみせます。
なぜって……あの人たちを排除するには、よほどのことがなければ無理でなくて?
女王陛下に王子が生まれればその子を王太子にして……というのも可能ではあるけれど。現に弟ぎみのゲオルグ殿下が王太子の地位にあるのだもの。一番の権力者は王太子と女王の母后よ。クーデターでも起こさない限りそれは無理でしょ』
『う、うん……まあ、そうだけど』
ぼくが曖昧に頷くと、マリアはビシッとぼくを指さし言い切った。
『ですから、カールお兄様は女王陛下について護って差し上げてください。相手を油断させるためにも必要なことですわ』