Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編
『そうだね。マリアのお父上はあくまで王太后派だろう?いきなり手のひら返しするより、味方のふりして油断を誘う方がいいね』
もちろん、ぼくたちの仲間には伯爵を継ぐことになるアーベルも加わっている。けれど、その彼をチラチラとマリアが見てるのは気のせいか?なんか頬っぺたも赤いし……。
『というか、マリア。君は年回りで王太子妃候補にもなるよね?公爵家の次男とはいえ、お父上は侯爵ではあるし。身分血筋に不足はない上に、君が聡明なことは知れ渡ってる。有力な候補じゃないか?』
アーベルが意外な点を指摘して、なるほどと思った。確かに、侯爵家の長女で王家の血も引いてるマリアなら、誰にも文句がつけようがない王太子妃になれるだろう。
けど、何でかマリアはいきなり顔を真っ赤にしてぶるぶる震え、怒鳴るように反論してきた。
『……王太子妃なんて、要りませんわ!そんなもの……ほ、他の女性に……く、くれて差し上げますわ。わたくしが自由に動けた方が……アーベル公爵家のためになりますし、女王陛下のためにもなりますもの』
『そうだね……それもそうだ。マリア、勝手なことを言ってごめんね』
アーベルがそう言ってマリアの頭を撫でると、マリアはいきなり怒りだした。
『……っ、こ、子ども扱いなさらないで!わたくしも立派なレディですのよ』
『そうだ。失礼しました、レディ・マリア』
アーベルが紳士的な謝罪をすると、マリアはまた真っ赤になったけど。ぼくにはまだその理由がわからなかった。