Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編
マリアは公爵家を継ぐ決意をしたようだったし、ぼくには願ったり叶ったりだ。
そりゃあ、侯爵より公爵の方が王宮に対する影響力は違うもんね。
表向きは王太子に仕えるふりをするけど、やり過ぎないようコントロールする……と。無論、僕たちと常に連絡を取り合う、スパイ的な役割も引き受けてくれた。
娘が公爵家を継ぐことに、ヨーゼフ伯父様が反対するはずもない。この話は二つ返事で内諾を得られた。元々、伯父様は異国人の血を引く僕たちの存在が目障りだったらしいからね。
で。女王陛下には度々王宮から使者が来て様子窺いをしてくるし、“世話する役割の人”が派遣されてくるけど。絶対に悪意があるのはぼくでさえ判った。女王陛下を害そうとする密命を帯びている連中は、やんわりとお母様が追い返してくれたし、しつこい場合は女王陛下が命令で帰らせた。
女王陛下の“愛する人ができた”発言はやはり相手を焦らせたらしい。急に“婚約者を決めました” なんて手紙が来たりするのだから。
そのお相手が、子爵家の三男というのがまたバカにしてるよね。 しかも、ろくな噂を聞かないどら息子な上に、女王陛下より20は上ときたもんだ。最低な縁談だ。
それでも、王太后が推薦し貴族議会と宮内卿が認めたお墨付き。ほぼ国が決めたようなものだから、これを覆すのは難しい。
今の今まで、よもや女王陛下が自ら愛する者を見つけるなど想定外だったのだろう。どこまで彼女を軽んじてバカにしてきたのか……
で、いざとなれば適当な売れ残りを宛がってやれ、と。問題ある相手ならいつでも破談にできるから、という腹積もりだろうけど。とことん女王陛下に失礼だと怒りを覚えた。