Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編
3歳のお披露目会(パーティ)ではぼくは会話もせず、ただ挨拶をして大人の話を黙って聞いていただけだった。
だから、直接会ったとはいえ言葉を交わしたとは言えず、初めてミルコ女王と個人的に関わったのが6歳の時。王立グルンデシューレ(4年制の基礎学校・ドイツ圏では日本の小学校に相当する)での入学式で。
貴族のボンボン達のマウントが下らなさすぎて、式典が開かれてるホールをこっそり抜け出し昼寝の場所を探した。
で、しばらく歩いた先の道の外れに菩提樹の大木があり、回りには潅木があって条件にバッチリ。喜びいさんで駆け寄り、そのままの勢いで突っ込んでみればーー「きゃっ!」って甲高い叫び声。
まさか先客がいるなんて思いもよらず、ぼくは慌てて退いたけど。その女性?の背中には、くっきりとぼくの足跡。
(ヤバい……母ちゃんに殺される)
謝るより心配するより、まず先に我が身の危険を感じて震えたのは……まあ、6歳のガキだったし、仕方ないと思う。
きっと、おかん……もとい。お母様の怒気を想像し震えてたぼくは、死人みたいな顔をしてたんだろう。
踏みつけた相手の方に心配されてしまったんだから。
『きみ……大丈夫?ケガをしたの?』
不自然なまでに白い肌と銀糸のようなさらさらの髪。そして、吸い込まれそうな紅い瞳。年齢より小さな体。その女性こそ、当時13歳のミルコ女王だった。