Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編

“友達”……。

まさか、王太子殿下からそのような言葉を頂けるとは思わなかった。

『そ……それは有り難いお言葉……でございます』
『うむ……ど、どうだろう?無論、無理強いはしない。君たちがなってくれるなら……ぼくは、う、うれしいのだが……』

え、え、え……?

先ほどまで大人顔負けの凛々しさだった王太子殿下が……

恥ずかしそうに目を伏せ、そわそわと手元のブローチを弄って落ち着かない。気のせいでなく、ほんのりと頬も赤くて……。心なしか体も震えてる。

(え、なにこのかわいい生き物)

思わずそう思ってしまうほど、必死に照れくささを誤魔化そうとしてる王太子殿下が可愛く見えた。

いや、別に変な属性に目覚めたわけじゃないけどね。

きっと、王太后の悪影響で今までまともな友人も作れなかったんだろうな。許されるのは追従する人間ばかりだろうし。

『……殿下がよろしけろば、喜んで』

ぼくがそう答えた瞬間の、王太子殿下の喜びようは普通ではなかった。

『……ありがとう!ぼくも、誠心誠意真心を持って君たちを裏切らないと誓う。そして、及ぶ限り姉上のお力になれるよう努力するよ』

ぼくたち3人は誓いの証しとして、互いに身に付けていたものをそれぞれ交換した。グレースの伝統的なもので、裏切った時にその代償として公にできる証拠の品にもなる大切なもの。

ぼくから王太子殿下には、オーベン公爵家のぼく専用にデザインされた紋章が入ったカフスを。王太子殿下からぼくには王太子殿下の紋章が入ったブローチを、それぞれ手渡した。





< 87 / 113 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop