Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編

どう考えても、ミルコ女王陛下に落ち度などない。彼女は正真正銘、先代クリストフ陛下とシャルロッテ王妃の長子。ただそれだけというのに、この15年間実の母親からああもひどい扱いを受けていたのか。

たった5才で傀儡の女王に祭り上げられ、王太后らの失策の責任転嫁で……国民から憎まれる。

その上、北の離宮で隔離され囚人よりも手酷い扱いをされていた。女王というのに何一つ相応しい待遇どころか、人並み以下の生活を強制されていたんだ。

「……なぜ、実の娘なのにああも憎めるのでしょう?いくら嫌いな男との子どもでも……」

ぼくが、率直な疑問を口にしたところ。お母様は大きなため息をついた。

「……やっぱり、いくら聡くてもまだ“男の子”ね、カール」
「え?」

お母様はぼくが子どもだからとバカにした訳ではないけれど、きっと男だから子どもだから……理解するには足りない、という理由を挙げたのだろう。実際、ぼくが様々な経験を経て大人になっても、“彼女”から教えてもらうまで、真の意味では理解できなかった。

「女は、嫌いな相手には指一本触られたくないものよ……嫌悪感は相当なものなの。その点では王太后陛下には同情するわ。彼女はそもそも幼少時から修道院入りを自ら希望するような、浮世離れした信心深い少女だったけれど。強欲な父親が無理矢理王宮入りさせたらしいものね」
「……ですが、だからと言って女王陛下を冷遇していい理由にはなりませんよね?」

だから、なんだと言うんだ?
自分が辛かったから、と子どもを虐待していい理由などないはずだ。ましてや、最高位にいる最も尊い身分の人を。







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