Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編
お母様はつらそうな顔をされた……何だかぼくがお母様を責めているような気分になってしまう。
(お母様も立場があるし……そうそう動けないんだろうな)
お母様が女王陛下に仕えるようになってから、女王陛下はまともな暮らしが出来ている。自ら志願して出仕したのだから、お母様は女王派とみなされているだろう。
つまり……表だってお母様が王太后に逆らえば、それは即ち女王派を……ひいては女王陛下へ何か(悪いこと)をする時の格好の口実になる、ということだ。
ゲオルグ王太子殿下もぼくたちと同じ意思を持って下さってはいるけれど。まだ十の子どもだし、次の王位が約束されてはいても確実ではない。シャルロッテ王太后の出身である公爵家には、ぼくたちより濃い王家の血が流れているんだ。シャルロッテ王太后自身、第8位の王位継承権を持つ。兄のフランツは6位と……低くはあるが、王位の可能性はない訳ではない。
それゆえに、王太后はより大きな力を持っているんだ。王太后に逆らうということは、ひいては王家に……国に逆らうということなのだから。
(やはり……ぼくにはいい考えが浮かばない……何か打開策はないか……)
結局、ぼくもまだ子どもだ。いくら勉強して知識を増やしても、実経験が圧倒的に少ない。酸いも甘いも噛み分けた経験豊富な人ならばすぐ
わかることも、ぼくには難しい……。
そして、悩み抜いた末に出したアイデアは……
「お母様……女王陛下に王子が生まれるのが一番では?」
なんて。ずいぶん間抜けな提案だった。