Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編
けれど、それはお母様にすぐに否定された。
「残念だけどそれは難しいの……カール。とてもデリケートな問題だからあなたにも言えない……けれど。わたくしも……本音は女王陛下にはあきらめてほしくない。わたくしが女性として一番幸せと喜びを感じたことは……カール、あなたが生まれてくれたことだもの」
お母様から思わぬ言葉をもらい、何だか照れ臭くて挙動不審気味になってしまったよ……。
「え、えっと……そ、そうでしたか。ありがとうございます……?」
顔が熱くなったから、耳まで赤くなったのは自分でもわかった。お母様がクスリと笑って、緊張が緩んだのはよかったけど。
「そうよ。もちろん、人によって幸せの価値や基準は違うから一概に言えないけれど……あなたのお父様……ユリウスは、わたくしに真の愛を教えてくださったわ。組織のエージェントとして冷たい世界が当たり前だったわたくしに、あたたかい人間らしい感情を思い出させてくれたの。わたくしもユリウスを本当に愛した……だから……カール。あなたが生まれたの」
そういえば、お母様は元々工作員の一人だった。悪い人間だったお父様へハニートラップを仕掛けて……けれど、結果的に相思相愛で劇的な改心をさせたんだから大したものだよね。そして、お母様は組織を抜け普通に公爵夫人に。お母様の愛情も、お父様の愛情もすごい。
そんな愛が……女王陛下にもあるだろうか?
明人叔父さんとの間に、奇跡が起きること……可能性はゼロじゃない。ぼくは、それを信じて二人のサポートをしようと決意をした。