Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編
その後ぼくとアーベルはグルンデシューレを卒業し、見習いとはいえ無事に王宮入りを果たせた。
10歳から簡易な仕事とはいえ、実務を担うんだ。到底気は抜けない。昼を取って午後から学校で学び、夕方からようやく自由になる。
そうそう、ぼくは無事にオーベン公爵家の後継者から外れた。とはいえ、お父様が持つ複数の爵位のうち、伯爵は絶対に相続させるって脅されてるけどね。
マリアはお父様の養女となり、オーベン公爵家長女という扱い。ま、ぼくは寮生活だからマリアとはあまり会わないけどさ。
ゲオルグ王太子殿下も12歳になった際に正式に公爵家令嬢カタリーナ様と婚約された。以前おっしゃられたように、とても大切にされて仲睦まじいらしい。
王太子殿下の疑惑というか……ほぼ確信された事実があるゆえに、彼は自分の血から王位後継者を出すことはないだろう。 それはとても悲しいことだけど……今はベストな判断かもしれない。
シャルロッテ王太后は、相変わらず為すがままだ。気分屋でわがままで……残酷なまでに、純粋。小さな子どもそのものだ。
この頃になると、ぼくでさえ解るようになってきた。
王太后は、人間として成長できていない小さな少女なのだ……と。
強欲なのではない。
ただ自分の本能に忠実なだけの、わがままな子どもだ。
だからこそ、たちが悪い。
大人は自分が悪いとどこかで理解するが、王太后はそんな呵責すら感じないのだから。
葛藤や迷いなど、あるはずもなく。
ただ、全てを兄と自分の好悪や気分次第で決めていただけなんだ。