Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編
そして、女王陛下も少しずつ強くなっていってた。
明人叔父さんは相変わらず無表情で何を考えてるのかさっぱり読めないけどね。彼なりに女王陛下を大切にしてる、というのはわかった。
ぼくも、侍従見習いとして王宮に仕えるようになっていたからね。女王陛下の間近に配属されたのは宮内大臣兼長官となったお父様の配慮だろうな。
『カール、今日はお天気が良いから陛下は庭園でお茶をされるそうよ。侍女のお手伝いをしてきなさいな』
女王陛下付きの侍女長となったお母様に指示をされ、頷いたぼくはあずま屋のある庭園に出た。
女王陛下が自ら設計に参加した、小さな小さな庭園。彼女は華美なものは好まず、むしろ自然なままが好きらしい。
元々生えていた植物を活かしたデザインで、まるで原っぱのような牧歌的な雰囲気がある。
近くに植えた木々は成長が早く、もう木陰を作るほど大きくなった。
暗殺の危険があるから遮蔽物は作るべきでない、と反対されたみたいだけどね。女王陛下は頑として譲れない、と突っぱねたらしい。
わりと頑固で負けん気が強い御方だ、とお父様は笑ってらしたっけ。
(……そういえば、ぼくが初めて陛下に会ったのも庭園でだったよな)
今から、6年も前の話だ。
あの時6つだったぼくも、もうすぐ12歳になる。
身長もかなり伸びてきたし、声変わりも迎えてきている。子どもだから、という言い訳は使えなくなってきた。
いわゆる、思春期だ。
そして、困ったことがひとつ。
以前にも増して美しく成長した女王陛下を、まともに見られなくなってきたのだった。