Gypsophila(カスミ草)~フラれ女子番外編
まあ、親友の恋愛事情はともかく。
僕も指摘されてようやく自覚はした。6年前から女王陛下に初恋をしてた……ってね。
けど、自覚はしてもどうこうしようとは思わない。告白して結果を迫るのは、結局自分のエゴだ。ようやく少しでも安らかな日々を送れるようになったひとに、自分の想いを吐露して悩ませるつもりはないんだ。
ぼくはまだ12歳のガキに過ぎないけど、それくらいわかるよ。
アーベルだって解ってる。だから、あれ以来無責任にけしかけてくる事はないし、ぼくの恋愛に関して話をすることはなかった。その代わり、付き合ってるマルガレーテとののろけ話は散々聞かされたけどね。
貴族議会は相変わらず荒唐無稽な縁談を寄越してくるし、決して明人叔父さんを婚約者とは認めなかった。
これだけ長い年月経っても頑ななのは、絶対王太后の意向もある。……正確にはその兄の、だろうけどね。
けれど、それをひっくり返す慶事が女王陛下に訪れた。
その日は朝から女王陛下の体調が優れず、ずっとベッドに横になってらした。
最近度々食事は残すし、青い顔をして吐き気もあるようで。だるく熱っぽいとおっしゃる。
お母様はなにかを気づいてはいたようだけど、細心の注意をして女王陛下に接していて。宮内庁のトップであるお父様になにかを相談し、陛下の仕事をセーブさせていた。
そして、御殿医を呼んで診察させた結果……
『おめでとうございます。女王陛下ご懐妊でございます』
ーーと。告げられた。