【番外編】ロマンスフルネス
誤魔化すのは卑怯だと思うから。


「ねえ、失礼だけどあなたは夏雪さんや私とはステージが違うの。洗練された容姿でもなければ、家柄も才能も何も秀でたところがないでしょう？」


「…あの、私のことご存じなんですか？」


「ええ、調べましたから。私があなたに負ける理由があるかどうか」


彼女は調査報告と書かれた冊子を掲げ、その中には撮られた覚えのない私の写真が貼ってあった。調べられても困ることは無い…はずだけど、探られていたと思うと怖い。


「私は…幼い頃に夏雪さんを一目見て以来、いつか真嶋家の姫となることだけを夢見てきました。

父は証券会社経営、母は元モデル。私もミスコンテストも度々受賞していますし、留学してMBAを取得し、毎日必死で自分を磨いてきたんです。」


「すごいですね…」


「少なくともあなたよりはね。夏雪さんにふさわしいようにずっと努力してきたの。夏雪さんのことが本当に大切なら考えてみて。あなたと私、どちらといる方が夏雪さんが幸せか」


その問いは、問い詰められるまでもなく何度も自問自答してきたことだった。


私で良いのかな。ふさわしくないかなって。


だけど、



「それでも私が夏雪のそばにいたいんです。
何も特別じゃない私でも、夏雪は…特別だと言ってくれるから。私にとっても夏雪は特別な存在だから」

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