【番外編】ロマンスフルネス
「ふざけないで泥棒!あなたのような庶民がアッパークラスに関わるのが間違…」
彼女が目を釣り上げた時、間を遮るように腕が伸び、そのままぎゅーーっと引き寄せられる。
「聞きましたよ、透子」
「わ、ちょっと待…!」
急に抱きしめられただけでもびっくりするのに、舞台用の扮装を残した夏雪は凶暴なほどの艶をまとっていた。
銀髪の髪には、同じ銀色の小さな鬼の角が2本見え隠れしてる。目の下に朱色のラインがまっすぐ引かれ、それが整った顔立ちの危うい色香を際立たせていた。
「怖かったでしょう、今の返事は称賛に値します」
「誉めなくていいから勝手に聞かないでよ、っていうかどっから現れたの!」
「ふふ、透子は俺のことを言える立場かと」
そう言われるとぐうの音も出ない。まさか澪音さんとこっそり見聞きしていた時、夏雪は気付いてたの?
夏雪は私を庇うように前に立ち、いつの間にか彼女の持つ調査報告書を取り上げている。
「上ノ森さん、透子を調べましたか。興信所でも使って?」
「夏雪さんのことが心配だったんです。だから父の秘書にお願いして…」
「大企業の運営に携わる秘書の力を一個人に向けるなど暴力同然です。データを消して下さい。もし約束頂けないなら、私があなたに同じことをしなければならない。」
「ねえ…彼女のどこがいいの?夏雪さんは騙されてるんだわ。
過去にどんな平凡な男性とお付き合いしていたかも、それを見て頂ければわかります」
そんな事まで調査できるのという驚きと同時に、それが報告書として夏雪の手の中にあることにとても嫌な気持ちになる。
夏雪は私の頭の上に、ぽん、と手を乗せて離した。その異図は分からないけど、一瞬で泣きそうになってしまった。
「どこが良いかと聞かれても…透子の魅力は誰にも教えないと決めています。
ただ、他人を貶めるために身辺調査までやってのける者は、少なくとも私の趣味ではない」
「酷い…!全て夏雪さんのためにした事ですわ。私はただ、夏雪さんのことをずっと想って…何もかも美しくて気高い、理想のお方だと…」
「誤解です。私は短気で、人を陥れることに躊躇いもない。ましてや恋人を傷付けた者に優しくできるほど、呑気な人間ではありません。
ですからこれ以上、私の敵に回らない方が賢明です。
…透子の調査データを消していただけますね?」
彼女が目を釣り上げた時、間を遮るように腕が伸び、そのままぎゅーーっと引き寄せられる。
「聞きましたよ、透子」
「わ、ちょっと待…!」
急に抱きしめられただけでもびっくりするのに、舞台用の扮装を残した夏雪は凶暴なほどの艶をまとっていた。
銀髪の髪には、同じ銀色の小さな鬼の角が2本見え隠れしてる。目の下に朱色のラインがまっすぐ引かれ、それが整った顔立ちの危うい色香を際立たせていた。
「怖かったでしょう、今の返事は称賛に値します」
「誉めなくていいから勝手に聞かないでよ、っていうかどっから現れたの!」
「ふふ、透子は俺のことを言える立場かと」
そう言われるとぐうの音も出ない。まさか澪音さんとこっそり見聞きしていた時、夏雪は気付いてたの?
夏雪は私を庇うように前に立ち、いつの間にか彼女の持つ調査報告書を取り上げている。
「上ノ森さん、透子を調べましたか。興信所でも使って?」
「夏雪さんのことが心配だったんです。だから父の秘書にお願いして…」
「大企業の運営に携わる秘書の力を一個人に向けるなど暴力同然です。データを消して下さい。もし約束頂けないなら、私があなたに同じことをしなければならない。」
「ねえ…彼女のどこがいいの?夏雪さんは騙されてるんだわ。
過去にどんな平凡な男性とお付き合いしていたかも、それを見て頂ければわかります」
そんな事まで調査できるのという驚きと同時に、それが報告書として夏雪の手の中にあることにとても嫌な気持ちになる。
夏雪は私の頭の上に、ぽん、と手を乗せて離した。その異図は分からないけど、一瞬で泣きそうになってしまった。
「どこが良いかと聞かれても…透子の魅力は誰にも教えないと決めています。
ただ、他人を貶めるために身辺調査までやってのける者は、少なくとも私の趣味ではない」
「酷い…!全て夏雪さんのためにした事ですわ。私はただ、夏雪さんのことをずっと想って…何もかも美しくて気高い、理想のお方だと…」
「誤解です。私は短気で、人を陥れることに躊躇いもない。ましてや恋人を傷付けた者に優しくできるほど、呑気な人間ではありません。
ですからこれ以上、私の敵に回らない方が賢明です。
…透子の調査データを消していただけますね?」