【番外編】ロマンスフルネス
「これ、ダウンロードできるんですか?」
「欲しがるなよ!僕はそういう話をしてるんじゃないんだ。」
澪音がテーブルに突っ伏した。日頃は貴公子然とした優雅な振舞いの当主がなぜ、と夏雪は疑問に思う。
「ナツが樫月グループのマスコットキャラクターに思い入れを持つのは良いことだと思うよ。でもね、これはないだろ。君は何を血迷ったんだ?」
「いえ、血迷ったなどと。誓って言えますが、あの時伝えた想いに一点の迷いもありません。」
愛おしげにおーくんの写真を眺めている夏雪に、樫月澪音は頭を抱える。
「…まあ、ナツの気持ちはこの際置いておくとして。
おーくんのイメージが問題なんだ。言っておくけどグループ創設200年記念のキャラクターだからね?
わけのわからない変なイメージつけられたら困るの。広報が金を払ってネットニュースの記事差し止めて貰ったんだから」
「そうだったんですか。考えが至らず申し訳ございません。」
自分の行動が現実的な迷惑をかけたことは反省せざるを得ない。
しかし、あの時の行動を振り返っても一片の後悔もなかった。何度あの瞬間に立ち戻ったとしても、同じように行動すると思う。
「それから、これは友人として言わせてもらうけど」
「友人?」
澪音が頬をひくつかせて驚きと薄笑いを浮かべる。いつ会っても表情の引出しの多い人である。
「あのね…『友人?』て。
百歩譲って疑問に思うのは構わないよ?それは僕がどうこう言うことじゃないから。
けど普通口に出すかな?出さないよね!こっちは傷付くからね!」
「そうですか」