π to Σ
(6)
自転車をこぐ翔の背中から、いつもと違う匂いがした。
「翔、香水変えた?」
「あん? ちげーよ。今日はつけてねーもん」
「えーでも匂うよ」
「匂うとか言うな。ワックスの匂いじゃね?
さっきつけたばっかだし」
「ふーん」
通勤ラッシュで混雑する大通りを、軽快にすり抜ける自転車。
憂鬱でしかなかった朝も、翔がいれば、幾分かマシだ。
「翔、香水変えた?」
「あん? ちげーよ。今日はつけてねーもん」
「えーでも匂うよ」
「匂うとか言うな。ワックスの匂いじゃね?
さっきつけたばっかだし」
「ふーん」
通勤ラッシュで混雑する大通りを、軽快にすり抜ける自転車。
憂鬱でしかなかった朝も、翔がいれば、幾分かマシだ。