雨は君に降り注ぐ
2
翌日、私は、思い切り理子にドヤされた。
大学の講義室に入るなり、理子は、私に詰め寄ってきた。
その顔は、どこからどう見ても不機嫌だ。
「結希~。」
思わず、後ずさる。
すごい剣幕だ。
「昨日あの後、うちがどれだけ大変だったか、知ってる~?!」
あの後。
あの後、私と工藤くんは、打ち上げ会場に戻ることはなく、あの丘で解散した。
私はすぐにアパートへ帰り、ベッドにダイブした。
そして、お気に入りの抱き枕を引き寄せると、それに顔をうずめて、気の済むまで泣いた。
泣く、なんて、何年ぶりだったんだろう。
10歳の誕生日以来だから…かれこれ、8年半ぶりだ。
あの時、もう泣くもんかって思っていたのに。
でも、ひとしきり涙を流したら、スッキリした。
これからどうしよう。
私は、ちゃんと、工藤くんと向き合わなければならない。
自分の本当の気持ちにも、ちゃんと向き合わなきゃ。
工藤くんは、私に真摯に向き合ってくれたんだから、私も、誠実に。
「ちょっと結希、ちゃんと聞いて!」
なんて考え込んでいたら、目の前にいる理子のことを忘れていた。
「あ、うん。なんだっけ?」
「あの後さ、先輩たちはみんな酔いつぶれちゃって。うちが、全員タクシ~で、それぞれの家まで送ったんだよ?!」
おかげでバイト代がタクシ~に消えたわ、血、理子は嘆くように言う。
「大変だったのに、あんたと工藤くんは、いつの間にかいなくなってるしさ。お酒飲んでなかったのうちだけだったから、あそこの居酒屋での飲食代も全部うちが出すことに…。」
それは確かに大変だ。
昨晩は、みんな調子に乗ってたくさん飲んでいたし、おつまみの量も尋常じゃなかった。
その金額を全て合計すると……
考えただけで、頭がくらくらする。