雨は君に降り注ぐ


 翌日、私は、思い切り理子にドヤされた。

 大学の講義室に入るなり、理子は、私に詰め寄ってきた。
 その顔は、どこからどう見ても不機嫌だ。

「結希~。」

 思わず、後ずさる。
 すごい剣幕だ。

「昨日あの後、うちがどれだけ大変だったか、知ってる~?!」

 あの後。

 あの後、私と工藤くんは、打ち上げ会場に戻ることはなく、あの丘で解散した。

 私はすぐにアパートへ帰り、ベッドにダイブした。
 そして、お気に入りの抱き枕を引き寄せると、それに顔をうずめて、気の済むまで泣いた。

 泣く、なんて、何年ぶりだったんだろう。

 10歳の誕生日以来だから…かれこれ、8年半ぶりだ。
 あの時、もう泣くもんかって思っていたのに。

 でも、ひとしきり涙を流したら、スッキリした。

 これからどうしよう。

 私は、ちゃんと、工藤くんと向き合わなければならない。
 自分の本当の気持ちにも、ちゃんと向き合わなきゃ。

 工藤くんは、私に真摯(しんし)に向き合ってくれたんだから、私も、誠実に。

「ちょっと結希、ちゃんと聞いて!」

 なんて考え込んでいたら、目の前にいる理子のことを忘れていた。

「あ、うん。なんだっけ?」
「あの後さ、先輩たちはみんな酔いつぶれちゃって。うちが、全員タクシ~で、それぞれの家まで送ったんだよ?!」

 おかげでバイト代がタクシ~に消えたわ、血、理子は嘆くように言う。

「大変だったのに、あんたと工藤くんは、いつの間にかいなくなってるしさ。お酒飲んでなかったのうちだけだったから、あそこの居酒屋での飲食代も全部うちが出すことに…。」

 それは確かに大変だ。

 昨晩は、みんな調子に乗ってたくさん飲んでいたし、おつまみの量も尋常じゃなかった。
 その金額を全て合計すると……

 考えただけで、頭がくらくらする。
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