雨は君に降り注ぐ
「まあもう終わったことだし、気にしちゃいないんだけどさ。」
理子は、わざとらしくため息をつく。
いやいや、気にしていたから、今私に話をしているんでしょ?
話の様子から、理子はまだ怒っているように見受けられるし…。
「で?結希は何してたのさ?」
「何って?」
「とぼけても無駄よ。うちには全部分かってるんだから。」
と言って、彼女は、名探偵のポーズを決めてみせる。
今にも、『真実はいつも…!』的なセリフを言いそうだ。
「結希と工藤くんが同時にいなくなって、まさか2人ともそのまま帰ったわけじゃあるまいし。何をしてたのよ?」
「何を、してたって…。」
なんと言えばいいだろう。
正直に言うのは、少し怖い。
でも、それは、逃げなんじゃないか。
ここで嘘をつくなんて、そんなのおかしすぎるだろう。
もう、逃げないって決めたんだ。
ちゃんと向き合うって、決めたから。
「理子、あのね。」
私は、昨晩起こった出来事を、全て正直に話した。
数分後、理子は、難しい顔をして腕を組んでいた。
「話は大体分かったけどさ…。」
私も、理子がこれから話そうとしていることくらい、大体分かる。
「やっぱりその時、きっぱり断っておくべきだったと思うよ。」
うん。そうだよね。
私だって、分かってたんだよ。
でもあの時、私は逃げてしまった。
工藤くんから。
自分が傷つくことから。