雨は君に降り注ぐ

 7月も、いよいよ後半に突入した。

 夏休みはもう目の前。
 大半の学生は、浮足立っている時期だ。

 しかし、私は1人、浮かない顔をしていた。

 あれから、まだ理子と1度も話せていない。
 大学の講義で、よく顔は合わせるのだが、挨拶さえ交わしていない。

 話しかけてくれたらいいのに。

 何度もそう思った。
 でも、この気まずい空気をつくった張本人は、私だ。
 話しかけるきっかけは、私がつくるべきなのだ。

 頭では、分かっているのだが。

 対して工藤くんとは、サークルで話す回数が多くなった。

 彼は、前と同じように、爽やかに話しかけてくる。
 告白の返事を急かすこともない。
 たまに、あの花火の夜のことを、忘れてしまいそうになるくらいだ。

 工藤くんが、あまりにもいつも通りに接してくるので、私も拍子抜けしてしまい、告白の返事をするタイミングを、見失ってしまっている。

 もちろん、早く返事をすることにこしたことはない。

 工藤くんは、多分この先もずっと、私から告白の話を切り出すことを待っていてくれるだろう。
 彼はそういう人だ。

 きっと、私の気持ちが決まるまで、いつまでも待っていてくれる。

 そう、だから、私から切り出さないといけないのだ。

 頭では、分かっているのだが。

 私の頭を悩ませている問題は、もう1つある。
 高井先輩。

 今や、私の頭の中は、高井先輩のことでいっぱいだ。
< 109 / 232 >

この作品をシェア

pagetop