雨は君に降り注ぐ
7月も、いよいよ後半に突入した。
夏休みはもう目の前。
大半の学生は、浮足立っている時期だ。
しかし、私は1人、浮かない顔をしていた。
あれから、まだ理子と1度も話せていない。
大学の講義で、よく顔は合わせるのだが、挨拶さえ交わしていない。
話しかけてくれたらいいのに。
何度もそう思った。
でも、この気まずい空気をつくった張本人は、私だ。
話しかけるきっかけは、私がつくるべきなのだ。
頭では、分かっているのだが。
対して工藤くんとは、サークルで話す回数が多くなった。
彼は、前と同じように、爽やかに話しかけてくる。
告白の返事を急かすこともない。
たまに、あの花火の夜のことを、忘れてしまいそうになるくらいだ。
工藤くんが、あまりにもいつも通りに接してくるので、私も拍子抜けしてしまい、告白の返事をするタイミングを、見失ってしまっている。
もちろん、早く返事をすることにこしたことはない。
工藤くんは、多分この先もずっと、私から告白の話を切り出すことを待っていてくれるだろう。
彼はそういう人だ。
きっと、私の気持ちが決まるまで、いつまでも待っていてくれる。
そう、だから、私から切り出さないといけないのだ。
頭では、分かっているのだが。
私の頭を悩ませている問題は、もう1つある。
高井先輩。
今や、私の頭の中は、高井先輩のことでいっぱいだ。