雨は君に降り注ぐ
「結希!サ~クル、どこ入るか決めた?」
入学から早3週間。4月も終わりへと近づく頃。
その日の講義を終え、さあ、いよいよ帰るぞ、という時。
理子が声をかけてきた。
「サークル?全然。考えてもなかった。」
「本当?じゃ、これから一緒に決めない?」
「…いいけど。」
全然考えていない、というのは嘘だ。
本当は、サークルには入るつもりはなかった。
もう、あの頃のような思いはしたくないから。
でも、理子の顔を見て、考えが変わった。
いつまでも逃げているわけにもいかないだろう。
「やった!…でね、せっかく青葉に入学したんだから、やっぱり、スポ~ツ系のサ~クルがいいと思うんだけど…。」
青葉大学は、東京の、比較的自然の多い区画に位置する、全国的にもかなり高い人気を誇る大学だ。
偏差値や学力のレベルは、決して高くはない。
なにしろ、この私が合格できてしまうくらいだ。
緑の豊かなゆったりとした空間。
自分に合ったペースで学習に取り組める充実した環境。
大学生活をより楽しめる豊富なサークル設備。
と、トントン3拍子そろった、文句なしの大学。
それが、青葉大学だ。
特に青葉は、スポーツに力を入れており、運動系のサークルだけで、その数は60をゆうに超える。
また、それぞれに合ったサークル活動ができることも、青葉の特徴の1つだ。
例えば、テニスサークルでは、趣味で楽しむ人のための、本気で全国を目指す人のための、初心者向きの、上級者向きの、など、それぞれの目的に応じたテニスサークル活動を選ぶことができる。
実際、青葉のいくつかのサークルでは、全国で優勝した実績もある。
また、指導がやさしく分かりやすく、短期間で確実な実力を身に着けられることから、初心者からの人気も高い。
そのため、運動サークルに入りたいがために、青葉を受験するものも少なくはないし、入学したものの過半数は、運動サークルへの入会を希望する。
理子が今、私をスポーツ系のサークルに誘っているのも、当然のことだろう。