雨は君に降り注ぐ
3
いじめで受けるダメージがどれほどのものか、私は人1倍分かっているつもりだ。
私が在学していた桜庭学園は、中高一貫だった。
中学を卒業した私は、そのままエスカレーター式に、桜庭学園高等部に入学した。
もちろん、高等部に入ってからも、陸上は続けるつもりだった。
陸上部は私にとって、唯一の居場所だったから。
ところが、高等部に入学して早々、ある事件が起きた。
それは、新入部員紹介の時。
新しい部員の顔ぶれをひと通り眺めていた時、私は思わず、
『あっ。』
と、声を上げた。
そこには、中学の時から私をいじめ続けてきた、いわば、クラスのボス的な女子の顔があった。
彼女は、私と目が合うと、意地の悪い笑みを浮かべた。
私の背筋が、一瞬にして凍り付いた。
その翌日、陸上部で、ある噂が流れた。
『吉岡さんて、石倉さんのこと、いじめてるらしいよ。』
石倉、というのは、私をいじめていた女子の名前だ。
そう、昨日、陸上部に新入部員として入ってきた女子の名前。
その根も葉もない噂がばらまかれてから、陸上部員の私に対する態度が、分かりやすくガラッと変わった。
私は、陸上部でも、いじめを受けるようになったのだ。
陸上は好きだった。
陸上部の先輩たちのことも、大好きだった。
それなのに。
私は、陸上部でのいじめに耐えられなくなり、高校2年になると同時に、退部した。