雨は君に降り注ぐ

 突然、新川先輩が笑いだした。
 耳をふさいでしまいたくなるほど、キンキン響く高笑い。

「あなたたち、何も分かってないのね!」

 思わず、後ずさる。
 ものすごい威圧感だ。

「くだらない正義感ふりまいちゃって、何様のつもりよ?あなたたちは、簡単にいじめいじめって言うけど、私の気持ちを少しでも考えたことがあるの?」

 急に、笑い声が止まった。
 新川先輩は、真顔でこちらに近づいてくる。

「私は、そういう人が1番嫌い。どうせ、ヒーローになった気でもいるんでしょ?本当、気に入らない。あんたたちには関係ない話なんだから、これ以上首を突っ込まないでよ。」

 次の瞬間、新川先輩が、私の肩をつかんだ。
 気づいたときには、地面に押さえつけられていた。
 抵抗しようと手足を動かすが、新川先輩の力の方が、強い。

 かろうじて顔を上げると、女子2人に羽交い絞めにされている理子の姿が、目に映った。
 もう1人の女子が理子の前に立ち、手をあげる。

 乾いた音が、中庭に響いた。

「理子っ!」
「帰れって、忠告したわよね?」

 新川先輩の平手が、私の頬に当たる。
 もう1つ、乾いた音が響く。

「痛っ…!」

 顔の左半分に、激痛が走った。

 顔を上げると、理子の顔に再び手をあげようとしている女子の姿があった。
 理子は、反射的に目をつぶっている。

 今にも理子に向かって振り下ろされようとしている、意地悪な顔をした女子の右手。

 その手を、誰かがつかんで、止めた。
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