雨は君に降り注ぐ
4
翌日。
夏休みまっただ中だが、私は、サークルに顔をのぞかせることにした。
あれから、新川先輩がどうなったのかも知りたかったし、ただ純粋に、サークルの皆に会いたかった。
大学校内に入り、まっすぐ体育館に向かう。
と、廊下で、ある人とすれ違った。
目が合うと、彼の方から笑いかけてくれた。
「一ノ瀬先輩…。」
なぜ、一ノ瀬先輩が、夏休みに大学に来ているのだ。
どこのサークルにも属さない先輩は、特に大学に用など無いはずでは…?
その質問を投げかける前に、一ノ瀬先輩が、自ら答えてくれた。
「今日は、涼介さんに挨拶をしに来てたんだ。」
涼介先輩に…?
「え、なんで、」
「君は?何しに来てるの?」
この質問も、一ノ瀬先輩にさえぎられてしまった。
なぜ、涼介先輩に会いに来ていたのか。
ものすごく気になるけど、その疑問も、先輩の優しい笑顔には勝てやしない。
「私は、普通に、サークルの活動に参加しに来ました…。」
「ああそうか、君、バスケサークルだったね。」
ところで先輩、私の名前、覚えてますか?
「そういえば、」
一ノ瀬先輩が、何かを思い出したように、手を叩いた。
「3年の新川さん、青葉、やめるみたいだよ。」
「え、」
何、それ。
新川先輩が、大学をやめる?
なぜ?
昨日のことがあったからか。
私も、原因の1つなんだろうか。
「なんで、やめるって、知ってるんですか?」
「さっき、廊下で新川さんとすれ違って、少し話したんだ。今日は退学届けを出しに来たって言ってたから。」
なんで、新川先輩の名前は覚えているんですか。
…いや、今、そんなことはどうでもいい。
なぜ新川先輩は、退学届けなど出しに来たのだろう?