雨は君に降り注ぐ
「新川さんだったんでしょ?」
私がうつむいて考え込んでいると、一ノ瀬先輩は、低く優しい声で、ささやく様に言った。
「…バスケサークルの、噂の原因。」
思わず、目を見開いた。
「なんで、それを…?」
「涼介さんと、君の友人の、…小澤さん?から、大体のことは聞いたよ。君が、率先して解決に向けて動いたんだって?」
涼介先輩と理子が、そんなことを?
「いや、私だけじゃ、何もできていなかったんです。理子……小澤が協力してくれとことも大きかったし、涼介先輩だって。」
「でも、何とかしたいって考えたのは、君じゃないか。あの日、中庭まで僕に会いに来たのだって、君の意思なんだろう?」
「それは、まあ…。」
先輩は、にっこりと微笑んだ。
「行動に移そう、そう考えることは、誰にでもできることじゃないんだ。」
「でも私は、周りの助けを借りてばかりで…。」
「周りの助けを借りられたのは、君の、今までの行いがあったからじゃないの?」
そうなんだろうか。
理子が協力してくれたのは、なぜなんだろう。
彼女の優しさなのか、それとも、
助けを求めてきていたのが、私だったからなのか。
「君は、よく頑張ったと、僕は思うよ。実際、1人の人を助けたんだからさ。」
一ノ瀬先輩は、優しく、私の頭をなでる。
髪がくしゃくしゃにならない程度の力で、優しく。