雨は君に降り注ぐ

「でも私、まだ不安なんです。」
「何が?」

「私がやったことは、すっごく見当はずれな事だったんじゃないかって。間違ってたんじゃないかって。実際、新川先輩は大学やめちゃうし、私、周りに迷惑ばっかりかけて、1人で舞い上がってただけなんじゃないのかって…。」

 話しているうち、目の縁が熱くなりかけていることに気づく。

 最近の私は、妙に涙もろい。
 あの夜、花火の夜に泣いてから、私の涙腺はゆるゆるだ。

 それまで、8年以上も泣いていなかったので、たまっていた涙が一気に溢れ出しているのだろうか。

 泣きそうな私に気づいたのか、一ノ瀬先輩は、少し困ったような顔をした。

 まただ。
 私が泣くことで、誰かが困る。
 迷惑をかけている。

 泣いちゃダメなのに。
 頭では分かっているのに。

 とうとう私の右目から、涙が1つ、頬を伝って廊下に落ちた。

 その次の瞬間、私は、

 一ノ瀬先輩の腕の中にいた。

「先輩…?」
「何が1番正しいのかなんて、誰にも決められないよ。」

 先輩の優しい声が、息遣いが、私の耳に響く。

「でも僕は、君の行動が間違っていたなんて、絶対に思わない。」

 先輩の言葉で、余計に涙が出る。
 崩れ落ちそうになる私の体を、一ノ瀬先輩の腕が、しっかりと支えている。

「だから大丈夫だよ。君は、自分に自信を持ったっていいんだ。」

 思い上がりかもしれない。
 それでも、私は、

 人生で初めて、自分の存在を肯定された気がした。
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