雨は君に降り注ぐ

「あのっ!…もう1つ、聞きたかったことがあるんですけどっ。」

 呼び止めると、新川先輩は、不思議そうな顔をして振り返った。

「何?」
「その…、」

 ずっと、引っかかっていたこと。

 訊ねるのは、失礼な事なのかもしれない。
 でも、このままモヤモヤし続けていくのは、絶対に嫌だ。

「あの、新川先輩、私に手紙を送ったりとかって…しました?」
「…してないけど?」
「じゃあ、私の住所を知ってたりとか、します?」

 新川先輩は、困惑の表情を浮かべている。
 嘘をついているとは、とうてい思えない。

「知らないわよ…?どうして?」
「いえっ、何でもないです…。すみません、時間とらせちゃって。」

 新川先輩ではない、…なんとなく分かっていたことだ。

 黒フードの人物。

 新川先輩の視線が、それに似ていると思ったことが、何回かある。
 なぜ似ていると思ったのか。
 2人の視線に、共通していた感情。

 悪意。

 でも、2人は別人だ。

 新川先輩の視線からは、黒フードの人物ほどの悪意は感じられない。
 あくまで私の直感だけど。

「じゃあ、私行くわね。」

 新川先輩は、軽く手を振って、去っていく。
 私も、手を振って見送った。

 あの夜、私を追いかけまわした黒フードの人物。
 あれは一体、誰なんだろう。

 あの視線は、確かに悪意の塊だった。

 私、誰かに悪意を持たれるような事、したかな…?
< 158 / 232 >

この作品をシェア

pagetop