雨は君に降り注ぐ

 体育館に戻ると、今度は理子が駆け寄ってきた。

「会ったよ。」

 何の話か分からない。
 新川先輩に会った、ってこと…?

「一ノ瀬に。」

 あ、そっちか。
 そういえば、涼介先輩に挨拶だとか、そんなことを言っていたっけ。

 理子とは、初対面になっていた訳だ。

「なかなかイケメンじゃん!涼ちゃんには負けるけど?」

 私はそこで、新川先輩の言葉を思い出す。

『斉藤くん、絶対、吉岡さんのことが好きだわよ。』

 それがもし本当なら、絶対にダメだ。
 涼介先輩は、私の大切な友人の好きな人なのだ。
 私なんかを好きになっちゃ、絶対にダメ。

「一ノ瀬先輩、何しに来てたの?」
「ん?なんか、涼ちゃんと2人で話してたよ。内容までは分からないけど。」

 本当に、挨拶をするためだけに来たのか?
 一体、何の話を…。

「仁菜ちゃん、退学するってね。」

 理子が、声のトーンを落とす。
 その表情は、少し寂しそうでもあった。

「なんか、すっきりした表情だったよ。昨日までの仁菜ちゃんじゃないみたい。楓も、今日は楽しそうに練習してるし…。」

 そう言って、後方を振り返る。

 そこには、笑顔でシュート練習をする、高井先輩の姿。
 昨日までの不安そうな表情は、もうどこにも無い。

「色んなことが、いい方向に進んでる。」

 理子は、私に向き直った。

「全部、結希が起こした行動のおかげだよ。すごいよ、結希。」
「そう、なのかな…。」

 私は、理子の目をしっかりと見据えて、言った。

「実は、そのことについて、理子に話があるんだ。」
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