雨は君に降り注ぐ
私と理子は、2人でいつかの学食に来ていた。
あの時と変わらず、学食には人1人いなかった。
私と理子は、隅の方の、目立たない席に腰を下ろす。
「…で、話って?」
早々に、理子が切り出す。
「大したことじゃないんだけど。」
でも、私にとっては大したことだ。
これまでの人生の中で、誰かに心からの感謝を伝えたことなど、1度も無かったのだから。
「私ね、今回の新川先輩たちの件で、その…何とかしたいとは思ってたんだけど、実際に行動に移すことが、すっごく怖かったんだ。」
理子は、何も言わずに、私の言葉に耳を傾けてくれている。
「その時、理子がいてくれて、協力してくれて、本当に心強かった。」
言おう。
今まで、理子に言えていなかったこと、全部。
こんな素晴らしい親友に隠したいことなど、今の私には思いつかない。
「…私、実は、中高ずっといじめられてたんだ。」
目の前で、理子が息をのむのが分かった。
「だから、その痛みが分かるからこそ、高井先輩を助けてあげたいって考えたんだと思う。…私、中高がそんなだったから、今まで、友達とかできたことなくって…。」
ダメだ、また、泣きそう。
「私にとって、理子は、何よりも大切な存在で、それで、今回の件で、理子がずっと私のそばにいてくれたことが嬉しくて、すごく嬉しくて、それで…。理子には、感謝してもしきれなくて、一緒にいてくれてありがとうって言いたくて…。」
ついに、涙がこぼれる。
理子は、私のことを優しく見つめている。
「結希…ゆっくりで、いいから。」
「うん…。」
涙をぬぐって、理子に向き直る。
「理子、大好き。」
再び、視界がにじむ。
「これからも、どうか、私の大切な友人でいてください…。」