雨は君に降り注ぐ

 私と理子は、2人でいつかの学食に来ていた。
 あの時と変わらず、学食には人1人いなかった。

 私と理子は、隅の方の、目立たない席に腰を下ろす。

「…で、話って?」

 早々に、理子が切り出す。

「大したことじゃないんだけど。」

 でも、私にとっては大したことだ。
 これまでの人生の中で、誰かに心からの感謝を伝えたことなど、1度も無かったのだから。

「私ね、今回の新川先輩たちの件で、その…何とかしたいとは思ってたんだけど、実際に行動に移すことが、すっごく怖かったんだ。」

 理子は、何も言わずに、私の言葉に耳を傾けてくれている。

「その時、理子がいてくれて、協力してくれて、本当に心強かった。」

 言おう。
 今まで、理子に言えていなかったこと、全部。

 こんな素晴らしい親友に隠したいことなど、今の私には思いつかない。

「…私、実は、中高ずっといじめられてたんだ。」

 目の前で、理子が息をのむのが分かった。

「だから、その痛みが分かるからこそ、高井先輩を助けてあげたいって考えたんだと思う。…私、中高がそんなだったから、今まで、友達とかできたことなくって…。」

 ダメだ、また、泣きそう。

「私にとって、理子は、何よりも大切な存在で、それで、今回の件で、理子がずっと私のそばにいてくれたことが嬉しくて、すごく嬉しくて、それで…。理子には、感謝してもしきれなくて、一緒にいてくれてありがとうって言いたくて…。」

 ついに、涙がこぼれる。
 理子は、私のことを優しく見つめている。

「結希…ゆっくりで、いいから。」
「うん…。」

 涙をぬぐって、理子に向き直る。

「理子、大好き。」

 再び、視界がにじむ。

「これからも、どうか、私の大切な友人でいてください…。」
< 160 / 232 >

この作品をシェア

pagetop