雨は君に降り注ぐ

 午後6時。

 夏の空は、まだ明るい。
 そして、蒸し暑い。

 私は、青葉大学の中庭にいた。
 木の陰に隠れるように立って、これから来るはずの理子たちを待つ。

 待っている間、私の頭に、ある疑問が浮かんだ。

 プレゼントを渡すことって、そんなに緊張するような事だろうか?

 もちろん、私も緊張した。
 緊張した、けれど…正直、そこまでではなかった。

 誰かに見守っていてほしいとか、そんなことは、考えもしなかった。

 緊張しいの私がその程度なんだから、メンタルの強すぎる理子が私に見守っていてほしいだなんて、そんなこと、ありえるだろうか。

 そうこう考えているうちに、少し離れたところから、話し声が聞こえてきた。

 来る。

「話って、何?」
「まずね、涼ちゃん、誕生日おめでとう!」

 2人は、私のちょうど目の前で立ち止まった。
 気がうまいこと立っていてくれているおかげで、2人からは私は見えない。

「覚えていてくれたの?」
「あったりまえじゃん!」

 理子と涼介先輩のやり取りを見ながら、私は考える。

 …顔面偏差値高いわあ。
 まさに、美男美女カップル。

「それでね、あたし、プレゼント用意したんだ!」

 理子の一人称が、例のごとく、『あたし』になっている。

「はい!コレ。」
「…これ、僕に?」

 理子がバッグから取り出したのは、緑の包装紙できれいに包まれた、四角い小さな箱。

「今開けてもいい?」

 理子は、元気よくうなずいた。
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