雨は君に降り注ぐ

 涼介先輩の、爪まで整ったきれいな細長い指が、包装紙をかき分ける。
 四角い箱を開け、出てきたのは、

「え、これ、本当にいいの?」

 中身は、腕時計だった。
 私でも知っている、高級ブランドの。

「もちろんだよ。涼ちゃんのために用意したんだから。」

 マジか、理子…。
 銀色に光るその腕時計は、どれだけ低く見積もっても、5万円は下らなそうだ。

 誕生日プレゼンに、5万円…。

 私が一ノ瀬先輩にプレゼントしたキーホルダーなんて、近所の雑貨屋で見つけた、500円ぐらいのものだ。

 そういえば、あのキーホルダー。
 一ノ瀬先輩、どうしているかな?

「どう?」

 涼介先輩はさっそく、腕時計を身に着けている。

「すっごい似合うよ!」

 理子は、手を叩いて喜んでいる。
 涼介先輩も、まんざらでもなさそうだ。

「実はね、涼ちゃん…。今日はもう1つ、話したいことがあったんだ。」

 理子の声のトーンが、急に真剣なものになる。
 涼介先輩も、その変化に気づいたようで、姿勢を正した。

「…何?」

 優しく、訊ねる。

「あのね、あ、あたし…。」

 声が、震えている。

 ここからが本題か。
 そのために、私を呼んだのか。

「あ、たし、」
「大丈夫。ちゃんと聞いてるから。」

 涼介先輩が、柔らかく微笑む。

「あ、たしね、涼ちゃんのことが……好きなんだ。」

 震える声の最後の方は、よく聞き取れなかった。

「あたしと…付き合ってくれませんか?」
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