雨は君に降り注ぐ
私も、幸せな恋愛をしてみたい。
相手はもちろん……
いやいやいや。
私は、頭に浮かびかけていた考えを、慌てて打ち消した。
たとえ妄想でも、そんなこと考えるなんて、思い上がりもいいところだ。
私と、一ノ瀬先輩の未来なんて…
いやいやいや。
夢を見すぎだ。
しっかりしろ、私。
一ノ瀬先輩には、すでに愛すべき人がいるんだから…。
「結希っ。どしたの、深刻な顔しちゃって。」
気づくと、理子が真横にいた。
「えっ…あれ、涼介先輩は?」
「もう帰ったけど?」
いつの間に。
私、ずいぶん深く考え込んでいたみたいだ。
「ていうか、理子!」
「ん?」
「ん?…じゃないよ!」
本当にびっくりしたんだから。
「何?これを見せるために、私を呼んだの?」
「…そうだよ。だって、人生で初めての告白だもん。緊張しちゃってさ…。」
そうだ。
理子が、涼介先輩にプレゼントをあげることくらいで、緊張するはずがないのだ。
だからって、まさか告白だなんて…。
「告白なんて、予想してなかったよ。」
「ごめん、驚いた?」
理子は、ぺろりと舌を出してみせる。
「でもよかったじゃん。これから、涼介先輩と付き合えるんでしょ?」
「そうなんだよ!」
理子は、嬉しそうに飛び跳ねる。
相変わらず、かわいらしい。
「次は、結希の番だよ。」
「何が?」
「何がって…。次は、結希が一ノ瀬に告白する番だよ!」
私は、言葉を失った。