雨は君に降り注ぐ
3章 嵐の予感
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9月。
季節は秋。
厳しい残暑はまだ続いているが、それでも、だいぶ過ごしやすい気温になった。
夏休みはとっくに終わり、私は昨日から、青葉大学への通学を再開した。
昨日は、いろんな人から心配の声をかけられた。
『吉岡さん、何かあったら遠慮なく相談してよ。』
と、涼介先輩。
『無理はしないでよ、結希ちゃん。』
と、工藤くん。
皆、私の母が亡くなったことを知って、同情してくれているんだろう。
すっごくありがたいこと、なんだけど…、
そんな中、理子はいつも通りの態度で接してくれた。
多分、彼女なりに気を使ったんだと思うけど、今の私には、同情や心配をされるよりは、いつもと変わらない態度で話しかけてくれる方が嬉しい。
そんな昨日から、1日たった今日。
今日は、昨日聞けなかったことを、涼介先輩に訊ねなければ…。
そう考えて私は、朝から緊張していた。
講義が全て終わり、体育館へ向かう。
更衣室で体操着に着替えてから、すばやく涼介先輩を捕まえる。
彼は、いつもの特大キラースマイルで、私に挨拶をした。
「吉岡さん。どうかした?」
「あの…ちょっと質問があるんですけど…。」
涼介先輩は私に向き直り、聞く姿勢をとる。
私は、両手のこぶしを握り締めた。
これから私が涼介先輩に訊ねようとしていることは、涼介先輩のプライベートに、深く入り込んでしまう質問だ。
失礼かもしれない。
嫌われるかもしれない。
それでも、知りたい。
「涼介先輩…妹さんがいましたよね、1つ下の。」
涼介先輩の目が、見開かれた。
「3年前に亡くなられた、瑞葵さんのことです。」