雨は君に降り注ぐ
そんなこんな考えているうち、電車が、私の最寄り駅のホームへと滑り込んだ。
改札を抜け、駅の外へと踏み出す。
あたりはすっかり真っ暗だった。
少し肌寒いこの感覚が、秋の到来を実感させられる。
とりあえず、今日はこのまままっすぐアパートへ帰ろう。
温かいお風呂に入って、夕飯は冷凍のコロッケがあったかな…。
これからのことを考えながら、私はふと、顔を上げた。
そして、その場に立ちすくんだ。
人の流れが速い、駅前の大通り。
その人ごみの中に、その人は、いた。
その人も、私と同じように立ち尽くし、こちらをじっと見ていた。
その顔は、
黒いフードをかぶっているせいで、よく見えない。
私の背中を、嫌な汗がつたう。
あいつだ。
私に手紙をよこしてきた、ストーカー。
黒フードの人物。
しばらく姿を見ないので、すっかりストーキングは終わったものだと思い込み、安心しきっていた。
でも、その人は今、まぎれもなく、私の目の前にいる。
再び私のことを追いかけまわそうとしているのか。
どうする。
私の膝は、がくがくと震えていた。
それに反し、脳みそはフル稼働で動き、今のこの状況を冷静に判断している。
今私を見つめているその人は、いつかのストーカー。
黒フードのせいで顔はよく見えない。
かなりの高身長。180cmは余裕である。
体格から判断するに、おそらく男。
そこまで考えてから、私は1度、深呼吸をする。
男との距離は、およそ50m。
…大丈夫。
これほど離れていれば、逃げ切れる。
元陸上部の足をなめてもらっちゃ困る。
逃げるしかない。
他に方法はない。
今回も都合よく一ノ瀬先輩が助けに来てくれるなんて、そんなことはあり得ない。
私は、少女漫画の主人公ではないのだから。
ピンチは、自分の力で切り抜けなくちゃ。