雨は君に降り注ぐ

「どこから話そうか…そうだな、まずは、瑞葵が中学生の頃からかな…。」

 涼介先輩は遠い目をしたまま、ゆっくりと語りだした。



 瑞葵さんはその当時、中学2年生だった。

 彼女は、1つ上の先輩に恋をした。
 それが、一ノ瀬汐暖。

 だが、当初は瑞葵さんの一方的な片思いで、一ノ瀬先輩は、そもそも恋愛だとか異性だとか、そういうのに全く興味がなかったそう。

 瑞葵さんは、自分の想いを告白することができないまま1年が経ち、春になって、一ノ瀬先輩は、雪立(せつりつ)高校へと進学していった。

「え、せつりつって、あの雪立高校のことですか?」

 すっとんきょうな声を上げた私を見て、涼介先輩は、中途半端に口角を上げた。

「そ、雪立高校。一ノ瀬は、当時はかなりのキレモノだったんだ。」

 雪立高校。

 都内でも有数の進学校。
 偏差値は驚くほど高く、その知名度は桜庭学園と並ぶほど。

 一ノ瀬先輩、めちゃくちゃ頭いいんだ…。

「瑞葵は、何としても一ノ瀬に会いたかった。だから、」

 必死に勉強した。

 一ノ瀬先輩と同じ高校に入るために、勉強して勉強して勉強したおした。
 そのため、体調を崩すこともしょっちゅうだったという。

 その努力が報いて、瑞葵さんは翌年に無事、雪立高校に合格した。

 瑞葵さんは一ノ瀬先輩と、1年ぶりの再会を果たしたのだ。

 …なんだか、ドラマみたいな展開。
 聞いていてドキドキする。
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