雨は君に降り注ぐ
瑞葵さんの死因は、交通事故による、後頭部の打撲と多量出血によるものだった。
彼女は午後7時過ぎに、車が大量に行きかう交差点で自ら車道に飛び込み、そこへちょうどスピードを上げて走ってきていた、大型の配送トラックにはねられた。
即死だった。
すぐにトラックの運転手が救急車を呼び、応急処置が行われたが、間に合わなかった。
瑞葵さんの命は、いとも簡単に消えていった。
「信じたくなかったな。まさか、まさか瑞葵が、」
涼介先輩は、絞り出すような声で言う。
「自殺、するなんて。」
そう、瑞葵さんは、自ら車道に飛び込んだ。
警察は、彼女の死を自殺とし、終わらせた。
しかし涼介先輩は、それに納得ができなかった。
『瑞葵が自殺なんてするわけがない。』
これは、何らかの事件なんではないか。
瑞葵さんは、何者かに殺されたのではないか。
そう、警察に直談判をしたこともあったそうだ。
当然、まともに取り合ってはもらえなかったが。
瑞葵さんが亡くなった翌日、一ノ瀬先輩が、涼介先輩の家を訪ねてきた。
『涼介さん、僕、本当に、取り返しのつかないことを…。』
一ノ瀬先輩はそういうと、その場に土下座した。
涼介先輩は戸惑った。
彼はなぜ、頭なんて下げているのか。
『一ノ瀬、あ、あのさ、』
『ごめんなさい。すみませんでした…!』
一ノ瀬先輩は、しきりに謝罪を繰り返した。
涼介先輩とその両親は、その様子を、呆然と見守っていた。