雨は君に降り注ぐ
「えと、うちのサークルは、基本的に自由だよ。来たい時に来て、好きなだけバスケをやればいい。中には、俺や斉藤キャプテンみたいに、本気で全国狙うやつもいるけど……。結希ちゃんは、バスケ初心者だよね?」
「はい。」
「じゃあ、しばらくは、俺が練習に付き合うよ。」
「工藤せんぱ……、工藤くんは、バスケが得意なんですよね?」
すると、工藤くんは、呆れたというように、口をあんぐりと開けた。
「結希ちゃん、さっきの話、聞いてなかった?俺、ここのエースだって、紹介されたと思うんだけど……。」
そういえばそうだった気がする。
正直、昨日のストーカーと、一ノ瀬先輩のことで頭がいっぱいで、よく聞いていなかった。
「まあいいや。あ、うちの女子メンバーも紹介しないとね。」
工藤くんは爽やかに笑うと、近くにいた女子メンバー2人を呼びよせた。
工藤くんに呼ばれた女子2人は、目を輝かせてこちらへやってきた。
「2人とも、この子、新しく入会した1年の結……吉岡さん。」
「初めまして、私、3年の新川仁菜といいます。」
「あたしはぁ、2年の高井楓ですぅ。」
新川先輩は、おっとりしていて、上品そうに見えた。
対して、高井先輩は、ちょっとキツそうなぶりっ子に見える。
あくまで、私の第一印象だけど。
2人とも、キラキラした目で自己紹介をしていた。
だけどその目は、私ではなく、工藤くんに向けられているようだった。
…工藤くん、モテるんだ。
「私は、1年の吉岡結希です。これから、よろしくお願いします。」
私も、軽く自己紹介をして、頭を下げた。