雨は君に降り注ぐ
工藤くんのバスケ指導は、恐ろしいほど分かりやすかった。
「そう、もっと腰を下ろして、ひざのバネを使って投げるんだ。」
そういうと、まずは工藤くんが、お手本に1本投げてくれる。
工藤くんが放ったボールは、きれいな弧を描いて、リングの中へ吸い込まれていった。
私も、それをまねして投げてみる。
ボールは、なかなか思ったように飛ばない。
すると、工藤くんは、私の体の後ろ側から私の手を取り、正しいフォームを教えてくれる。
確かにそれは、効率的な教え方なのだろう。ただ、
…距離が近い。
工藤くんのがっしりとした手が、私の手に触れている。
彼の息遣いがよく分かる。
もはや、シュートに集中することができない。
もちろん、工藤くんは、私との距離のことなんか、これっぽちも気にしていないだろう。
工藤くんは、いたって真面目に、私にバスケを教えてくれているんだから。
私も、頑張って集中しないと。
変なことでドキドキしている場合じゃない。
その日のうちに、私は、スリーポイントを軽々と決められるようになった。