雨は君に降り注ぐ
大学を出ると、あたりは真っ暗になっていた。
当然だ。
あと5分で7時になる。
「いや~、疲れた、疲れた。」
隣で、理子が小さな体で、めいっぱい伸びをする。
マネージャーって、そんなに疲れるものなんだ?
私はというと、ヘトヘトのクタクタだった。
2時間ほど、体をぶっ続けで動かしたおかげで、全身汗でびっしょりだ。
でも、どこかスッキリした。
運動って、こんなに楽しいものだったっけ。
「いや~、本当、斉藤先輩って、超~イケメンだわ。」
理子はまだどこか夢見心地だ。
「ところで、結希はどうだった?」
「え?…バスケ、楽しかったよ。」
「も~、そうじゃないよ~。」
理子が、楽しそうに笑いながら、言う。
「工藤くんとのことだよ。」
「ほえ?」
予想していなかった質問に、まぬけな声が出た。
「工藤くん、なかなかイケメンだったじゃない。うちはもっと大人っぽい人が好きだけど。」
確かに、工藤くんには、子供っぽい無邪気さがあった。
そこが彼の魅力のように、私には思えたが……。
「工藤くんと一緒に練習、したんでしょ?どうだった?」
「どうって、普通に楽しかったけど……?」
分かってないなあ、と、理子は言う。
「あんなイケメン、なかなかいないよ?狙おう、とか思わない?」
私はやっと、理子の言おうとしていることが、理解できた。
「…私、男の人を、異性として意識したことがないから、」
「え~、何それ、もったいない!」
理子が、私の声をさえぎるように、口をはさんできた。
「もっと男に興味を持とうよ!結希のタイプって、どんな?」