雨は君に降り注ぐ

 私のタイプ?

 今まで、『恋愛』というものに全く縁がなかったから、考えたこともなかった。
 私の好きなタイプって、何だろう?

「…優しい人、かな。」
「そんなの、男としての最低条件でしょう?」

 理子は、だんだん興奮してきたようだ。

「もっと欲張んないと!優しくて、純粋な人とか、一途な人とか、何でも欲しいものを買ってくれる人とか!」

 え、私、そこまでは……、

「顔は?どんなのが好み?」
「…うーん、整っているほうがいいけど、でも、あんまりこだわんないかなあ……。」
「じゃあ、工藤くんでもいいんじゃない?」

 確かに、工藤くんはイケメンだし、優しそうだ。
 でも、何か違う気がする。

「結希はせっかくかわいい顔してるんだからさ、もっと、自分を売り込んでいったほうがいいと思うよ?」

 しばらくの間、私は、理子が何を言っているのかよく分からなかった。

 かわいい。

 かわいい顔。

『結希はせっかくかわいい顔してるんだからさ』

 …私が?

 私が、かわいい顔?

 そんなこと、初めて言われた。
 かわいいなんて……。
 自分でも、思ったことがなかった。

 嬉しい。

「要するに、結希は、恋をしたことがないんだね?」

 私は、静かにうなずいた。

「結希は、まだトキメキってものが、どんなものかを知らないんだ。もしかしたら、結希は、結希の知らない間に、恋をしていたのかもしれないよ?」

「うーん…、よく分からないな…。」

「今まで、胸がキューってなったり、意味もなく泣きたくなったり、そんなことはなかった?」

「たぶん無いと思う……。」

「そっかあ……。」

 理子は少し、残念そうな顔をした。

「いつ現れるかな。結希のハートを打ち抜く、運命の人。」
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