雨は君に降り注ぐ
思わず、その紙から手を離した。
膝ががくがくと震えている。
何も知らない人がこの手紙を読めば、少なくとも最初の一行を読んだだけでは、この手紙の送り主が何を言っているのか、理解しかねるところだろう。
でも、私にはわかる。
この手紙の送り主は、間違いなく、あの嫌な視線の持ち主だ。
私のことを、どこからか見つめていた人だ。
もちろん、根拠などない。
ただ、私の直感が言っている。
この手紙をよこしてきたのは、あの、『ストーカー』だと。
深呼吸。
よし、落ち着いた。
私は、足元に落ちていた、果てしなく気味の悪い手紙を取り上げた。
もう1度、深呼吸。
ワープロ文字に、視線を落とす。
『素敵なアパートだね。
まあ、俺は君のほうが素敵だと思うよ。
君を見ていると心が落ち着く。
君のことをもっと知りたい。君のすべてを知りたい。
安心して、俺はいつでも君のことを見ているよ。
でも、見ているだけじゃ、俺も、君だってつまらないだろう?
だから手紙を書いたんだ。
次は何をしてほしい?』