雨は君に降り注ぐ

「あの、斉藤先輩。」
「ん?」

 体育館で斉藤先輩を見つけると、私はさっそく声をかけた。

「どうした?」

 完璧すぎる顔に、この笑み。
 うーん……、さすがだ。

「あの、このサークルに、りょうすけって人って、いたりします?」

 斉藤先輩は、キョトンとした顔をした。
 でも、次の瞬間には、爆笑した。

「なんで笑うんですか…。」

 イケメンな顔を少し赤くして笑う斉藤先輩を見て、私は、恥ずかしくなってきてしまった。

「ごめんごめん。」

 やっと笑いがおさまってきた斉藤先輩は、それでもまだ笑いながら言った。

「そっか、吉岡さんには、まだ言っていなかったのか。」
「…何がですか?」
「吉岡さんの言うりょうすけってね、多分、僕のことだよ。改めまして、僕、バスケサークルキャプテン、斉藤涼介、といいます。」
「……え。」

 絶句した。
 頭の理解が追い付かない。

「斉藤先輩の下の名前って、涼介、だったんですか……。」

 じゃあ、一ノ瀬先輩の知り合いって……。

「うん。…あと、その、斉藤先輩って呼ぶの、やめない?僕、名字で呼ばれるの、慣れてないんだ。」

 工藤くんと同じようなこと言ってる……。

「では、何と呼びましょう?」
「涼介先輩、とか、どうかな?」

 あ、『先輩』はそのままなのね。

「分かりました。…涼介先輩。」
「うん。」

 涼介先輩は、嬉しそうに笑った。
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