雨は君に降り注ぐ
「ないよ!!」
自分でもびっくりするくらい、大きな声が出た。
食堂にいた学生のほとんどが、こちらに視線を集中させる。
「あ…、すみません…。」
軽く頭を下げてから、私は理子と目を合わせる。
「多分、それ、勘違い。」
「え…?」
理子の顔から、赤みが消えていく。
「私、涼介先輩のこと、意識したことないよ。」
「本当?」
理子が、いつものかわいらしい笑顔に戻った。
「なんだ、そっか…、よかった…。なんか、結希と涼介くんって、仲良さそうだったから…。ほら、この前も、2人でしゃべってたし。」
きっと、一ノ瀬先輩のことを話していた時だ。
「理子は、涼介先輩のことが、好きなんだね。」
理子の顔が、さっきとは違った意味で赤くなっていく。
「なっ…、なんでそのことをっ…!」
「私が気づいていないとでも?」
「っ……。」
理子は、恥ずかしそうにうつむいた。
ほんと、素直。
そして鈍感。
「なんで好きになったの?やっぱり顔?」
「最初は、顔が好きだったんだけど……、でも、あのサークルで、涼介くんのことを知っていくうちに、なんか、顔だけじゃなくって、どんどん好きになっていくっていうか、涼介くんの人間性とか、色々……。」
つっかえつっかえ、理子は話す。
本当に好きなんだなあ…。