雨は君に降り注ぐ
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「吉岡さん、行ったよ!」
新川先輩の声で、私は我に返った。
見ると、バスケットボールが、こちらめがけて飛んできている。
新川先輩が、パスをくれたんだ。
「うぉっと…。」
危ない危ない。
あと一瞬気づくのが遅かったら、ボールは私の顔面にクリーンヒットしていただろう。
時刻は午後4時半。
ここは体育館。
工藤くんのおかげでバスケの腕がだいぶ上がった私は、今、他の女子メンバーに混ざって、パス練習をしている。
皆と練習ができるのは、とても楽しい。
でも、私は今、バスケに全然集中できていない。
「吉岡さん、最近大丈夫?」
女子更衣室で着替えていると、新川先輩が声をかけてきた。
「なんか、元気がないみたい。」
新川さんが、心配そうに言う。
実際、元気がないわけではない。
ただ、最近、気が付いたらボーっとしている、そういうことが増えた。
原因はわかっている。
理子の爆弾発言だ。
『工藤くん、絶対、結希のことが好きだよ。』
あれは衝撃だった。
そんなこと、初めて知った。
理子が涼介先輩に気があることは知っていたくせに、工藤くんと自分のことについては、何1つ気づいていなかった。
いや、まだ、本当に、工藤くんが私に気があるかどうか分かったわけではない。
あくまで、理子がそう思っているだけだ。
でも……。
あれ以来、私は、工藤くんのことを、変に意識してしまっている。