雨は君に降り注ぐ
…なんだ、これは。
何をどうすれば、こんな出来損ないのラブレターもどきを書くことができるのだろう。
恐怖というより、嫌気が込み上げてくる。
とにかく、これで分かったことがある。
私は、確実に、ストーカー被害にあっている。
今までは、視線を感じていただけだったが、この手紙は決定的な証拠だ。
明日にでも、警察に行こう。
…いや、そんな悠長なことを考えている場合ではない。
今すぐにでも、警察に行こう。
でも、外はもう真っ暗だ。
この漆黒の闇の中、1人で出かけていくのはさすがに気が引ける。
110番。
反射的に、そのワードが頭に浮かんだ。
この場での最善は、100番通報することだ。
人生で初めての通報。
たったそれだけのことで興奮状態になっていた私は、スマホを手に取った瞬間、その一瞬だけ、冷静になった。
このまま警察に被害を訴えれば、まだ未成年の私は、きっと親に連絡されてしまう。
『こういう事になると思ってた!』
『だから、1人暮らしなんてさせたくなかったのよ!』
そうわめき散らす母の姿は、簡単に思い描くことができた。
私の頭の片隅に、一瞬だけちらついた母のその顔は、私がスマホの電源を落とすのに、充分すぎる理由だった。
私は、両親から愛されていない。