雨は君に降り注ぐ

 更衣室を出て、体育館のバスケコートに入ると、すぐに、工藤くんと目が合った。

 工藤くんは、何かもの言いたそうにしばらく私を見つめていたが、寂しそうな、気まずそうな、あいまいな笑みを浮かべて、目をそらした。

 これはまずい。

 私と工藤くんの関係が、明らかに、悪い方向に向かっている。

 いや、もともと、そこまでいい関係ではなかったのかもしれないし、これからも関係を発展させていこうとは思わないが、悪い関係にはしたくない。

 このままずっと気まずいまま、目も合わせられないだなんて、そんなの嫌だ。

 何とかしなくちゃ。

「あの、工藤くん…。」

 声をかけると、工藤くんはすぐに振り返ってくれた。

『何?結希ちゃん?』

 そういってくれることを期待したが、何しろ、昨日の今日だ。
 工藤くんは、振り返っただけで、何も言わない。

 …どう話し始めるか、考えておくべきだった。

 沈黙。

 世界で1番気まずい空気が流れる。

 何でもいいから、とにかく何か話さなくちゃ。
 そう考えた私は、後先考えずに、口を開いた。

「昨日のことなんだけど、」
「ごめんっ!」

 私が言い終わる前に、工藤くんが勢いよく頭を下げた。
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